エネルギー/中東安定化/積極平和主義→「機雷掃海」譲れぬ首相
安倍晋三首相が並々ならぬ意欲を示す集団的自衛権の行使としての戦闘下でのシーレーン(海上交通路)の機雷掃海。中東情勢が悪化するたびに不安定化するペルシャ湾・ホルムズ海峡での活動は日本にとって欠かすことができないと首相は判断している。ただ、集団的自衛権の行使対象を朝鮮半島有事など日本周辺に限定したい公明党との歩み寄りはまだ道半ばだ。
17日朝の「安全保障法制整備に関する与党協議会」で、自公両党は機雷掃海をめぐり真っ向から対立した。
山本順三参院自民党幹事長代理「国民も機雷除去はやっていいと思っている」
北側一雄公明党副代表「戦闘下の機雷掃海は武力行使だ。そうだろ政府!」
山本氏が報道各社の世論調査データをもとに理解を求めようとすると、北側氏は食ってかかった。
首相がホルムズ海峡の機雷掃海にこだわるのは、就任1年半での外遊先からも読み取れる。首相は昨年4月~今年1月にかけて、ペルシャ湾沿岸の湾岸協力会議(GCC)加盟6カ国を全て訪問し、安全保障対話の強化を打ち出した。ペルシャ湾の入り口となるホルムズ海峡は、日本の輸入原油のうち85%が通過するシーレーンの要衝だ。首相はホルムズ海峡が機雷で封鎖されれば、「経済的なパニックが起き、日本は決定的に被害を受ける」と指摘する。首相の経済政策「アベノミクス」を成功させるためにも安定したエネルギー供給が不可欠となる。
集団的自衛権の行使が可能になれば、「世界の中の日本」として中東の安定化に向け、積極的な関与もできる。高い掃海能力をもつ海上自衛隊は、先の大戦中に米軍が日本周辺海域に敷設した機雷を処理してきたほか、1991年の湾岸戦争後、ペルシャ湾での掃海任務にも就き、硫黄島などで実際の機雷を用いた訓練も常時行っている。
海自掃海艇部隊は装備や技術面で米軍や英軍に匹敵するとされるが、日本が集団的自衛権を行使しない現状では、機雷除去は戦闘行為停止後の「遺棄機雷」の除去に限定されている。
政府関係者は「国際的に海自の活動要請があるにもかかわらず、集団的自衛権の行使が認められないため、その要請に応えられないでいる」と指摘しており、首相が掲げる「積極的平和主義」にも逆行する。
与党協議会で集団的自衛権の行使対象を大幅に限定させたい公明党は今のところ譲る気配を見せていないが、首相の意を受ける自民党の高村正彦副総裁は公明党側にこう念を押した。
「ここは(首相の)意志は固いですよ」
「戦闘下の機雷掃海は武力行使」と言うのは違うのではないか。でも、シーレーンの安定化は必要ですし・・・。