<「イスラム国」人質>過ぎゆく時間…ヨルダン注視の日本
ヨルダン政府はイスラム過激派組織「イスラム国」(IS)の要求に応じて収監中のサジダ・リシャウィ死刑囚を釈放するのか。その判断は後藤健二さん(47)の解放にどう影響するのか。ISに拘束された後藤さんを名乗る音声メッセージの投稿を受け、政府は終日、ヨルダンの動きを注視した。しかし、政府が主体的に動ける余地は少なく、新たな動きがないまま現地の「日没」(日本時間29日午後11時半ごろ)が経過した。
菅義偉官房長官、加藤勝信、世耕弘成両官房副長官は29日夜、外出先から首相官邸に戻った。記者団の問いかけには「進展はない」とほとんど応じず、30日未明まで官邸にとどまって事態の推移を見守った。安倍晋三首相は夜の日程を入れず、官邸わきの首相公邸で待機した。
首相は29日、関係閣僚会議で、音声メッセージを踏まえて情報の収集と分析を強化するよう指示した。衆院予算委員会では「あらゆる外交チャンネルを最大限活用し、早期解放に向け全力で取り組んでいる」と状況を説明。「テロの脅しに屈するようなことがあれば、日本人に対するさらなるテロの誘発を生み、卑劣な暴力を行使する者の意図がまかり通る世界になる」と重ねて表明した。
菅氏と岸田文雄外相は予算委を午前の冒頭部分に出席しただけで退出し、その後はアンマンの現地対策本部に詰める中山泰秀副外相と連絡を取るなど事件対応に専念した。
ヨルダン政府はISに拘束されたヨルダン軍パイロットのカサスベ中尉とリシャウィ死刑囚を交換する姿勢を変えておらず、後藤さんを巡るこの先の展開は不透明だ。ヨルダン国内でパイロット救出を優先すべきだという世論が高まる中、政府は後藤さん救出への協力を強く要請しにくいのが実情。政府筋は「首相はヨルダンに申し訳ないことをしたという思いが強いのではないか」と首相の心情を代弁した。自身の判断でISの勢力圏に入った後藤さんと、軍の命令を受けたパイロットとでは拘束の経緯がそもそも違い、政府内には「日本はあれこれ言いにくい立場だ」という声もある。
ISの要求が身代金から人質の交換に変わった24日以降、主導権を失った政府はISの出方を読み切れていない。菅氏は29日の記者会見で「事案発生以来、ヨルダン政府に協力要請をしている。両国の間には信頼感がある」と述べ、緊密な連携を強調したが、ISにヨルダンと日本の関係が揺さぶられている現状に政府は焦りを強めている。
ヨルダンなど現地の情報が錯綜(さくそう)していることについて、首相官邸関係者は「存在感をアピールしようと狙うISがかく乱しているのかもしれない」と指摘。菅氏は会見で「厳しい状況であることはまったく変わらない」と述べる一方で、「後藤さんが生存しているという前提に立ち、一日も早い解放に全力を挙げる」と改めて強調した。【高橋恵子、田中裕之】
いったいどうなってしまうのでしょう・・・
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