ここにいるのが奇跡」羽生、復活へ悲壮な決意/フィギュア
3位以内に入ってほしいです。
フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第6戦、NHK杯が28日、大阪・なみはやドームで開幕する。第3戦の中国杯(上海)で中国選手と激突して負傷したソチ五輪男子金メダルの羽生結弦(19)=ANA=は27日、午後の公式練習に参加。4回転はサルコーが決まらず、トーループの成功率も低かった。頭部挫創や左大腿挫傷などからの復活へ向け、悲壮感を漂わせた。
20日ぶりの肉声が届いた。7日の中国杯ショートプログラム(SP)以来、公の場で言葉を発していなかった羽生が、スーツに身を包み、表情を引き締めた。公式練習後に大阪市内のホテルで行われた会見で、思いの丈を打ち明けた。
「自分の限界に挑んでいる。ある意味、死と隣り合わせ。ここにいること自体、奇跡に近い。自分の体に感謝している」
無数のシャッター音が響き渡るなか、銀盤に立った。公式練習ではフリーで演じる『オペラ座の怪人』を流して滑ったが4回転のサルコー、トーループは決まらず。与えられた40分間をフルに使い、計32本のジャンプに挑んだが、成功率は普段よりも低かった。他の選手にぶつからないように、以前より慎重に滑る姿も印象的だった。
最も深刻な負傷箇所は左大腿挫傷だった。9日の帰国直後は「痛くて寝られず、歩くのも大変だった」という。欠場に心が傾いた時期もあった。氷上練習を再開してまだ1週間ほど。万全でない羽生を突き動かすのは、V2を目指すGPファイナルへの意欲だ。傷つきながら2位に入った中国杯をむだにはしない。
3位以内で自力でのファイナル進出が決まる。SPは4回転を演技後半から負担の少ない前半に変え、フリーでは負傷直後の中国杯と同じく、後半の4回転を回避する。強行出場の賛否両論は、リンク上で答えを出す。
「万全の状態じゃないし、体力も落ちている。(周囲が)ファイナルにいきたい意思を尊重してくれた。今できる、最高の演技をしたい」
28日のSPは、世界ランキングに応じた滑走順で最終11番目となった。再びリスクを背負うのは百も承知だ。午後8時25分、日本中が注目する復活の演技が幕を開ける。