登場20年淘汰経て味わい深く 地ビール人気再び
地ビール人気が再燃している。登場から今年で20年。淘汰(とうた)の波を経て味を磨いた蔵が、着実にファンを獲得している。日本地ビール協会(兵庫県芦屋市)によると醸造所は200以上になり、兵庫県内では10の個性派がそろう。ここへきて大手が参入を決めるなど、さらなる広がりを見せそうだ。(土井秀人)
城下町の風情が漂う出石城跡(豊岡市)周辺。皿そばで知られる観光地で地ビール「いずし浪漫(ろまん)」が人気を呼んでいる。
醸造するのは観光レストランの出石城山ガーデン。そば粉を発酵させ、香りやコクを醸し出した。1998年の発売以降、改良を重ね、昨年、日本最大級の地ビールイベントの人気投票で見事1位に。社長の奥村忠俊さん(66)は「出石そばがうまいのは水がいいから。その水で仕込んだので自信がある」。
地ビールは94年、醸造免許に必要な年間生産量が引き下げられたことから参入が相次いだ。値段は高めだが、小規模ならではの味わいが受け、ブームになった。
その後、品質にばらつきがあることなどで関心が薄れ、90年代後半に出荷量は減少。しかし2005年ごろから再び上向きになった。日本地ビール協会によると、醸造所数はピークの3割減の214だが、出荷量は最初のブームの98年の約2倍の4万4千キロリットルに伸びている。
「味は格段においしくなった。技術を磨いた醸造所が増産している」と協会会長の小田良司さん(67)。近年は職人(クラフトマン)が仕込んだという意味などから「クラフトビール」とも呼ばれる。
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清酒大手の参入で有名なのが小西酒造(伊丹市)だ。95年の醸造開始以降、工夫を重ね、10年に開発したホワイトビール「スノーブロンシュ」は世界の三大コンテストで2冠に輝いた。
吟醸酒を仕込むように0・1度単位で温度管理。醸造責任者の辻巌さん(56)は「日本酒メーカーならではの発想が生きた」と胸を張る。
キリンビールは来春、本格参入する。ビール類の市場は9年連続で縮小。「若者を引きつけるきっかけにしたい」と担当者は意気込む。
消費者の嗜好(しこう)が多様化する現代。地ビール人気は当分続きそうだ。
〈地ビール〉特定の地域で小規模醸造されるビール。1994年の酒税法改正でビールの醸造免許に必要な年間生産量が2千キロリットルから60キロリットル以上に。6キロリットル以上で許可される発泡酒の免許で参入するところも。県内には六甲ビール▽明石ビール▽城崎ビール▽丹波篠山ジグザグブルワリーなどがある。
生産量では勝てないなら味とブランド力で打ち勝っていって欲しい。美味しいビールはひとつでも多い方がいいもんね。
登場20年淘汰経て味わい深く 地ビール人気再び