シャープ「アクオス・クリスタル」の乾坤一擲
すごそうだなぁ・・・
シャープがソフトバンクを介して8月29日から販売を始める新スマートフォン「AQUOS CRYSTAL(アクオス・クリスタル)」は、これまでにない新しさを持った端末だ。
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従来の携帯電話端末の液晶ディスプレイには「縁」(フレーム)があった。だが、アクオス・クリスタルではフレームがかなり細くなっており、まるで「ガラスが置いてある」「画面だけがある」かのような感覚に陥る。これをシャープでは「フレームレス構造」と称している。
アクオス・クリスタルは、液晶技術を得意とするシャープらしい製品であると同時に、同社として久々に「世界市場へ打って出る」製品だ。同社の開発チームに、開発の経緯と世界戦略について聞いた。
■ 「日米共同調達」にチャレンジ
「最初は、フレームレス構造のものが出来たので、それをソフトバンク向けにお見せした、というだけ。海外展開ありき、ではありませんでした。しかし、ソフトバンク側に非常に気に入っていただけて、その流れで、『国内だけでなくグローバルでの展開を検討しましょう』ということになったんです」
シャープでアクオス・クリスタルの商品企画を統括した、通信システム事業本部・商品企画室の澤近恭一郎室長は、商品展開の経緯をそう説明する。
アクオス・クリスタルは、フレームレス構造の外観が特徴だが、それだけでなく「調達形態」も特徴的だ。米スプリントを傘下に収めたソフトバンクグループが、日米で共同開発・共同調達を行い、スケールメリットを生かしたビジネス展開をする。日本メーカーは、スマートフォンの世界で苦戦しており、シャープも例外ではない。世界展開が難しく、スケールメリットが出にくいためだ。しかし今回、シャープは久々に海外向けの大型案件を手にした。
シャープはソフトバンクとは密接な関係にあり、シーズンごとにフラッグシップモデルを提供する間柄。そこで、自信のある技術を軸にしたモデルを持ち込んだ結果、今回の提携につながった。
これまでシャープは、海外市場向けの商品展開は薄く、開発についても「日本モデルを作ってから、それをどうやって海外展開するか、という形」(澤近室長)だった。だが、共同調達モデルになるため、開発の方法は大きく変わった。基本的な設計は共通で、各国の事情に合わせた無線通信部分だけが変わる。海外のスマートフォン大手ではあたりまえの開発手法だが、国内ビジネス中心だったシャープではようやく導入されるやり方になる。
「アメリカでどういうスペックの商品を出せばいいか、なかなかわからなかったところがあります。しかし今回、フレームレス構造をはじめて見た時『これはとんでもないものだ』と感動しました。その驚きはアメリカでも日本でも変わらないはず。それをご覧いただける商品を作ればいい、ということで、あまり迷うこともなく、最終的な商品スペックは決まった」(澤近室長)という。
■ ブランド力不足を「フレームレス一点突破」でカバー
フレームレス構造の液晶は、シャープが数年前から開発を続けてきたものだ。この商品で初お披露目というわけではなく、技術展示会などでの展示は行ってきた。また2013年からは、フレームレスとはいかないまでも、額縁が狭い製品を「EDGEST」ブランドで製品化し、自社スマートフォンに搭載してきた。それが「フレームレス」まで至った秘密はどこにあるのか。液晶パネルの開発を担当した、システム開発部・主任研究員の前田健次氏は「秘密はトータル設計にある」と話す。