ガソリン高騰　九州は全国最高値１７０円突破

ガソリン価格の値上がりが止まらない。九州７県のレギュラーガソリン価格は１４週連続で上昇し、６年ぶりに１７０円（１リットルあたり）を超えた。４月の消費税増税という国内要因に加え、イラクやウクライナの政情不安が原油価格を押し上げている。運輸業や漁業を中心にコスト増が深刻となり、景気回復に水を差しかねない状況となっている。（津田大資）

　資源エネルギー庁によると、九州のレギュラーガソリンの平均価格は６月第３週で１７０・６円（全国平均１６７円）だった。半年前より８・４円、１年前より１５・４円も値上がりした。

　九州はもともと、長崎県や鹿児島県のように離島が多く輸送コストがかかるため、全国９地域の中で最も高い。ガソリンスタンド（ＧＳ）が多い福岡市内でも、レギュラーガソリン価格を「１７１円」とする店舗が増えている。

　福岡市博多区のＧＳで給油した福岡県春日市の印刷会社経営、大木隆博さん（５８）は「配達や商談に車は欠かせない。高くてもガソリンを入れないと仕事になりません。利益がどんどん減っていくので、１円でも安い店を探し回っています」と語った。

　価格上昇を受け、５月ごろから店頭のボードに、価格を表示しないＧＳが目立つようになった。価格ボードそのものを店頭から外したＧＳもある。

　ガソリンの急速な値上がりの要因の一つが、４月のダブル増税だ。８％への消費税増税と合わせて、「環境税（地球温暖化対策税）」として１リットルあたり０・２５円が加算されるようになった。

　これに加え、円安と海外情勢の不安が引き金となった原油価格高騰がある。

　国際的な指標となる米国産標準油種（ＷＴＩ）は今年１月まで１バレル＝９０ドル前後だったが、ウクライナの政情不安が表面化した２月以後、上昇傾向に転じた。

　さらにイラク状勢が追い打ちをかける。

　イスラム教スンニ派の過激派組織「イラク・レバントのイスラム国（ＩＳＩＬ）」が首都バグダッドに迫る勢いを見せ、アーネスト米大統領副報道官が「情勢は深刻だ」と強い懸念を表明した今月１１日に１００ドルを超え、１３日には１０６・９ドルに達した。

　原油価格が上昇している以上、値上がりはガソリンだけではない。産業界の需要が大きい軽油も高騰している。

　九州の軽油平均価格は２３年４月に１１５・１円だったが、今年４月は１２６・４円まで上昇した。軽油価格も九州エリアが全国最高値となっている。

　景気回復に伴い、貨物輸送量が増大傾向にあるだけに、物流業界へのダメージは大きい。

　２００台のトラックを所有する地場大手の運送業、福岡運輸（福岡市博多区）の総務担当者は「値上がり幅がハンパじゃなくて打つ手がない。順次、低燃費のトラックを導入していますが、コスト増は避けられない」と表情を曇らせる。

　漁業にも影響が出る。漁船の大半は燃料として軽油を使う。高齢化と後継者不足に燃料費高騰が加わり、漁業が盛んな佐賀や長崎各県では、月に１～２人が廃業しているという。

　水産庁は平成２２年度に、軽油の輸入価格が基準を超えた場合、上昇分の半分を補助する制度を導入したが、小売価格高騰に追いつかず、焼け石に水の状況だ。水産庁水産業体質強化推進室の担当者は「これほど値上がり幅が大きく、長期になるとは想定していなかった。低燃費機材導入への助成など、燃油使用量の削減を重視するしかない」と述べた。

　原油高騰は、原発長期停止が続く中でエネルギー価格高騰に直結する。

　電気・ガスは、原油価格の変動を、自動的に毎月の料金に反映させる「燃料費調整制度（燃調）」が採用されている。この制度により、九州電力と西部ガスの料金は今年２月分から６月分まで５カ月連続で上昇した。この間、標準家庭で電気料金は４９０円増の７６０９円、ガスは３６３円増の６４６８円となっている。

　７月はいったん落ち着くが、燃調は３～５カ月前の原油価格の推移が対象となることから、８月以降の電気・ガス料金は、さらに上昇する可能性が大きい。

　資源エネルギー庁は、イラクの情勢不安が長期化し、今後さらに原油価格の高騰が進むとの見方を強める。

　２０日には、過激派組織ＩＳＩＬが、イラク最大のバイジ製油所を奪取したと報道された。ガソリンや軽油の値上がりはしばらく止まりそうにない。

いったいいくらまで上がるのでしょうか・・・
ガソリン高騰　九州は全国最高値１７０円突破