韓国船沈没一週間 「人災」の見方広がる
韓国南西部珍島(チンド)沖で沈没した旅客船「セウォル号」の事故原因は、急旋回したことで過積載の積み荷が荷崩れし、転覆に至ったとの見方が有力だ。船長が真っ先に脱出したり、運航会社が安全教育を怠るなどずさんな安全管理態勢が被害を拡大させた疑いも浮上。今回の事故について、専門家からは「明らかな人災」との見方が強い。
◆船体のバランス悪化
捜査当局は原因解明のため、まず船長のイ・ジュンソク容疑者(68)ら乗員8人を逮捕。船の改造業者や運航会社関係者ら計44人の出国も禁じ、事情聴取を続けている。
韓国メディアはこれまで、有力な事故原因として、高速航行中にほぼ直角に右旋回した可能性を指摘していたが、聯合ニュースは21日、実際には半円を描くように右旋回していたと報じた。操船状況については関係者の供述に食い違いがあるとされ、捜査の焦点になっている。
もう一つ注目されているのが、過積載状態での荷崩れだ。急な右旋回により、積み荷を固定していたロープがほどけて左側に片寄り、航行の安定を保つ復元力が失われた可能性が高いとみられている。
聯合ニュースは、セウォル号は改造によって重心が上がったため検査機関が積載貨物を減らすよう求めたのに、事故当時は指定量の3倍以上の貨物を載せていたとの見方を紹介した。鈴木邦裕・神戸大海事科学部客員教授は「客室増設の改造に加え、過積載でさらに重心が上がり、船体のバランスが悪くなった可能性がある」と指摘する。
◆職務放棄に批判の嵐
乗客を救助せず船から脱出したとして特定犯罪加重処罰法違反容疑で逮捕された船長のイ容疑者も、激しい批判にさらされている。
事故当時、セウォル号には船長以下、1等航海士や機関士ら約30人の乗員が乗船。船内放送で避難誘導して逃げ遅れた乗員1人を除き全員が救助された。イ容疑者は、乗客に脱出指示を出さないまま船を離れた。
運航会社も、運航管理規定で義務付けられている10日ごとの消火訓練や人命救助などの海上安全訓練をほとんど実施していなかったことも判明している。
鈴木客員教授は「安全訓練の実施状況をチェックしていたのか、国の監視態勢も問われてくる」と話す。
判断遅れで被害拡大
修学旅行途中の高校生ら100人以上が命を落とした今回の惨事では、救助方法も議論の対象となった。
沈没船に穴を開け空気を注入する方法も検討されたが、「生存者に必要な船内の空気が漏れてしまう」といった家族らの懸念もあり見送られた。
救助活動に詳しい海難審判庁OBは「沈没船に穴を開ける行為は一概に善しあしは判断できない」としつつも、「沈没するまで2時間もあった。海面に出ている船体を固定し穴を開けて救助に入る手法もあったはずだ。判断の遅れも被害拡大につながった可能性が高い」と指摘した。
これは誰の目からみても人災でしょう?
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