“空の宅配”サービス普及か アマゾン、ドミノピザ…無人機の平和利用
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「殺戮(さつりく)兵器」である無人機の平和利用が進みそうだ。米ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは2日までに、小型無人機で注文を受けた商品を30分以内に配達する新サービス「アマゾン・プライム・エア」構想を明らかにした。
米国では現在、無人機は軍事利用だけに制限されているが、米連邦航空局(FAA)が2015年に商業利用を解禁する方向で検討しており、これに合わせて実用化する計画だ。米ピザ宅配のドミノピザも開発を進めており、“空の宅配”が一挙に普及するかもしれない。
「まるでSFのように聞こえるだろうが、そうではない。環境に大変優しく、トラックで配達して回るよりもはるかに優れている」。
アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(49)は1日に放送された米CBSテレビの報道番組「60ミニッツ」に出演し、空の宅配構想を明らかにした。
「オクトコプター」と名付けられた小型無人機は、モーターで駆動する8つのプロペラを備え、搭載したGPS(衛星利用測位システム)で目的地まで自律飛行する。物流センターから半径16キロ以内ならどこでも注文から30分以内に配達できるという。搭載荷物は2.3キロまでだが、アマゾンで取り扱っている商品の86%が対象になるとしている。
ベゾス氏は番組で実用化時期について「4~5年後」と説明したが、すでに技術的な問題はクリアしており、FAAの商業利用解禁に合わせたサービス開始が可能だという。
実際、アマゾンが公開したデモンストレーション映像では、倉庫でスタッフが商品をランチボックスのような黄色の箱に入れると、ベルトコンベヤーで運ばれ、機体下部に自動装着。倉庫から飛び立ち、注文者の自宅の玄関先に着陸し、箱を降ろす様子が紹介されている。
アマゾン以外にも、ドミノピザが今年6月に、英国法人が開発した「ドミコプター」によるピザの宅配の映像を公開している。CNNによると、ドミノピザは当時、米国で無人機の商業利用が禁止されているため、「米国でこのアイデアを採用する予定はない」と、実用化を否定していた。
米国では、FAAが解禁に踏み切れば、空の宅配サービスが将来有望なビジネスになると期待されている。米通信社ブルームバーグによると、小型無人機関連ビジネスへの投資額は今年1~9月に前年同期の2倍にあたる4090万ドル(約40億円)に急増。無人機市場は、現在のゼロから10年以内に82億ドル(8200億円)にまで急成長するとみている。
大物ベンチャー投資家として知られるティム・ドレイパー氏(55)は「ピザの宅配から買い物まですべてを人間が関与せず、無人機に任せられるようになるだろう」と予測する。
一方で、米軍が中東などで行っている無人機によるテロリストへのピンポイント攻撃をめぐっては、多数の民間人が巻き添えで犠牲になっているとし、国際的な非難が高まっている。
商業利用解禁の背景には、ビジネスチャンスの拡大だけでなく、無人機に対するこうした逆風を弱める狙いもありそうだ。(SANKEI EXPRESS)