＜竜巻＞黒い渦が家々破壊　頭にガラス片降り中学生パニック

家々を破壊しながら迫る黒い渦。突風と共に、頭上から降り注ぐガラス片－－。「防災の日」の翌日の２日午後、竜巻とみられる突風の直撃を受けた埼玉県越谷市の中学校の体育館は、パニック状態に陥った生徒らの悲鳴に包まれた。けがをした市内の児童は「震えが止まらなかった」と振り返り、間一髪で難を逃れた住民も「逃げ遅れたらどうなっていたか分からない」と恐怖に青ざめた。日が暮れても広範囲で停電が続き、人々は不安な夜を過ごした。

【写真特集】「黒い渦」、根こそぎ倒れた電柱……車、がれきも散乱　突風の爪痕

　「『ゴー』というものすごい音だった」。越谷市大松の市立北陽中学校（生徒数２６７人）では、体育館の屋根がめくれ上がり、中にいたバレーボール部とバドミントン部の女子生徒（１、２年生）計２５人のうち８人が、後頭部や手足を切るなどの軽傷を負った。

　平勢整（ひとし）校長（６０）によると、２日は午前中に始業式を終え、午後は部活動がある生徒約１００人が残った。午後１時４５分ごろ、雷が鳴ったため、屋外にいたサッカー部や野球部、女子テニス部員を校舎内に避難させた。同２時ごろ、南西から黒い筋状の雲が近づくと突風が吹き、直後に雨が降ったという。

　体育館では、バレー部員らが外に出ずに待機していたが、突風を受けて耐震用の軽い素材でできた屋根が３分の１ほどめくれ上がり、逃げようとした生徒の頭上にガラス片が落下した。搬送された８人のうち、１人が後頭部を約１０センチ切るけが。別の１人が頭を約３センチ切り、他は手足を４～１針縫うなどのけがをした。敷地内の電柱が倒れるなど建物被害も相次いだ。

　平勢校長は「体育館にいた女子生徒はパニック状態で、自分の血を見て泣いている子もいた。まさかこんなことが起こるなんて」と驚いた様子だった。２年の女子テニス部員（１３）は「外から校舎３階に避難したら、窓のすぐ目の前に黒い竜巻が迫ってきた。『バーン』という物がぶつかるすごい音がして怖かった」と話した。

　北陽中から約１．５キロ離れた越谷市下間久里の市立桜井南小（児童数８６４人）も、竜巻とみられる突風に襲われた。児童らは帰宅した後だったが、窓ガラス数十枚が割れ、プールの金網が吹き飛ばされた。

　会議中だった工藤俊夫校長は「『雷が鳴って大変だな』と思って窓からグラウンドをみたら、ゴーッという音とともに砂ぼこりやトタンなどが舞っていた。次第に泥のような色の風が回り始め、通り過ぎるまで１分以上かかった」と話した。外で遊んでいた児童らが頭や肩に軽傷を負ったという連絡が相次いで入った。

　同小６年の桂寿玲（すみれ）さん（１２）は、校庭で遊んでいる最中に落雷に驚き、近くの友人宅に避難しようとした。途中で「大雨のような音がした」ため振り向くと、飛ばされた家の破片などが黒い渦の周囲をぐるぐると回っているのが見えた。「竜巻だ」。慌てて走り出したが、右手にアルミ板のようなものが当たり、直後に風に飛ばされて転倒。必死で友人宅に駆け込んだが、右手の甲を骨折した。桂さんは「死ぬ気で逃げた。震えが止まらなかった」と恐怖の瞬間を振り返った。

自然の力は凄いですね・・・・
＜竜巻＞黒い渦が家々破壊　頭にガラス片降り中学生パニック